2018.01.19

プラスのエネルギーを与えるのが私の仕事。それには自分が元気であることが大切。

プロテニスプレイヤーとして17年間も世界を舞台に活躍してきた杉山愛さんに、引き続き「オンとオフの切り替え方」についてお話を伺いました。
その中で出た、現役時代に培ったコミュニケーション術やセルフマネジメントについては、みなさんの仕事にも生かせるような、ためになるお話ばかりです。


オンとオフを上手に切り替えるコツはストレス発散やリフレッシュの時間を作ること。

私が目指している「ワーク・ライフ・ハーモニー」を実現するためには、仕事もオフも充実させることが大切です。
そのためにはオンとオフの切り替えが大事だと前号(vol.1)でお話しましたが、実際にはパッと切り替えられないものですよね。

特に仕事での失敗はオフの時間まで引きずってしまうものですが、私の場合は、どんなことも主人とシェアして、発散することで区切りをつけています。

「嬉しいことは2倍、悲しいことは半分に」じゃないですけど、仕事で気になることも主人と共有することで少し気が紛れるんですよね。
やっぱり仕事では、自分の思っていることを何でもかんでも言えるわけじゃありませんから。

特に私は今、仕事で発信する機会が多いので、自分が思っていることをどう伝えるか、言葉の発し方にすごく気を遣います。
なので、仕事中は気が張って、頭がパンパンになってしまうことがあるんです。

そんな時は、本当に仲のいい友人や家族と本音トークをしてストレスを発散するようにしています。
また、リフレッシュできる事を探すのも大切なこと。

私の場合は、育児や料理も気持ちの切り替えができる要素のひとつです。
料理は材料や栄養バランス、手順など、常にいろんなことを考えなければならないのですごく集中できるんです。

あとは仲間とお酒を飲んだり、ご飯を食べたり。気の置けない友人と過ごす時間は、心からリラックスできます。

ストレスのようなマイナス要素は溜めていても何も良い事はありません。
ですから、みなさんも仕事でのストレスは信頼できる友人や家族に話したり、仕事以外に楽しいことや集中できることを見つけて、少しでもオフの時間に仕事を引きずらないように心がけてくださいね。



プレッシャーに打ち勝つために取り入れた特別な呼吸法とプラスイメージの上塗り。

仕事をしているとプレッシャーを感じたり、くじけそうになったり、精神的に追い詰められることもあると思います。
私も現役時代はそんな体験をたくさんしました。

どちらかというと緊張するタイプなので、追い込まれると自分らしいプレーができなくなってしまうんです。
そこで取り入れたのが、イメージ作りを伴った呼吸法でした。
これを普段するようになってから、土壇場でも自分のプレーができるようになったんです。

私が実践したのは、塩谷信男さんという医学博士が考案した「正心調息法」という呼吸法。
簡単に言うと、へその下あたりにある「丹田」を意識しながら腹式呼吸をし、その上でいいイメージを思い描いていく、というもの。

プレッシャーを感じると体がグッと硬くなってしまったり、呼吸が浅くなってしまったりするんですよ。
そして、人間は失敗のイメージの方がつきやすいものですから、そのマイナスのイメージをどれだけ払拭して、プラスのイメージを上塗りできるか、ということも重要になります。

選手時代にこの呼吸法にトライして「いいな」という手応えがあったので、毎日朝晩30分、トレーニングの一環として続けていました。
実際に追い込まれてしまうと、こういう呼吸法があることすら思い出せないくらいパニクってしまうんです。

でも毎日トレーニングのように続けていると、ゲームの最中でも自然とそれができるようになる。
私にはとてもフィットした呼吸法だったので、今でも続けているんですよ。



相手に合わせた心地いい距離感でのコミュニケーションがチームの力に。

ダブルスのパートナー選びで一番大切にしていたのは「勝てるパートナー」ではなくて「楽しめるパートナー」ということ。
だから、基本的に好きな人としか組んでいません(笑)。

ツアーで気が合った選手とよくダブルスを組んでいたんですが、気が合う相手だと表情を見るだけで「今日は調子いいな」というのが一目瞭然でお互いにわかる。
その上で本音トークもしていく。

先程お話しした「ストレスを溜めない」じゃないですけど、気になった事はなんでも話し合うようにしていました。
そうすることで二人の絆が強くなり、チームとしても強くなっていったように思います。

正直、ダブルスはシングルスで強い二人が組んでも、技術的にはうまくても、息が合っていなければ1+1=2以上にはなりません。

1+1=2以上にするためには、パートナーとコミュニケーションを密にとることが大切です。
ダブルスは二人で1面を守るので、本来は一人が半面を受け持つだけでいいんですけど、二人がお互いに半面以上を受け持って、重なり合う部分が出てくることによって1+1=2以上の内容量になります。

仕事も同じで、一人では一人分の内容量しかこなせませんが、二人で組めば2以上の仕事ができるはずです。
どの世界でも、チームやパートナーとの綿密なコミュニケーションが相乗効果を生み出すもの。

本音で語られるのは好きじゃない、という人もいると思います。

大切なのは、その人との距離感です。
人それぞれに心地いい距離感があるので、相手に合わせることで関係性がスムーズになれば、それがベストだと思います。



苦手な人とうまく付き合うには自分の意識や見方を変えること。

社会に出れば、学生時代のように好きな友だちとだけ付き合っていける訳ではありません。
苦手なタイプの人と仕事をしなければいけないこともあるでしょう。

でも「この人、苦手だな」と思うと、マイナスの部分にばかり目がいってしまいます。
でもマイナスだけ、なんて人はこの世には存在しないので、あえてプラスの部分、いいところを探していくのがおすすめです。

私も現役時代、とても苦手な国がありました。
国民性や街の雰囲気がどうも合わなくて、試合で訪れてもいいパフォーマンスが全然発揮できなかったんです。

このままではいけないと思い、少しでもいいところを見つけようとしました。
国全体ではなく部分的に見てみると、実は安くておいしいものがたくさんあったり、一人一人に目を向けると実はいい人が多かったり。
プラス要素を見つけることで苦手意識を克服できたのです。

苦手だと思う部分はひとまず置いておいて、まずは自分の見方を変えてみてください。
違う切り口で見るだけで、印象は変わってくるもの。
そうすると意外にも苦手だった人を受け入れることができるようになったり、好きになったり、自分にも変化が見られます。

否定一辺倒では苦手になるばかりで何も解決しません。
まずは自身の受け取り方を変えて、苦手のゲージを減らせるような「いいところ」を見つけることから始めてみてはいかがでしょう。



テニスの指導でも講演会でもプラスの手応えが私のエネルギーになる。

現役を引退して少し経った今、改めて思うのは、やっぱりテニスの現場が自分の場所だということ。
今後は後進の指導にも尽力したいと思っています。

後輩たちに自分のやってきたことを伝えると同時に自分のスキルも磨いていきたいですね。
教える立場である私は、人にどれだけ気づきを与えられるか、ということがチャレンジになってきます。

子どもたちが「あ、わかった」と手応えを感じてもらうことが自分の喜びというか、私にとっては面白いと思えるエッセンスですね。

どんな仕事もトライ&エラーがあり、すべてが成功するとは思わないけれど、その選手が少しでもうまくなったり、テニスがより楽しくなったりするだけで私のエネルギーになります。

それは講演で来場者に「元気が出た」とか、「勇気をもらった」とか、プラスのエネルギーを感じてもらえた時も同じこと。
それがやり甲斐に繋がっていると思います。

選手としてやっている時は自分のプレーを見てもらって、元気とか勇気とか、私も頑張ろう、というような明日へのエネルギーを感じてもらうことがプロとしての仕事かな、と思っていました。

形は変われど、どんな場面でも人にプラスのエネルギーを感じてもらい、元気になってもらうことが、私が仕事を続けていく真意であり、ひとつの軸だと思っています。
そして、それが自分にとってのエネルギーにもなりますから。

人にエネルギーを与えるためには、自分も元気でなくては駄目なんですよね。
ですから、自分を大切にして、自分が喜ぶことをするためにもウィッシュリストは欠かせません。

自分と向き合い、自分にプラスのエネルギーを注入するためにも、みなさんもぜひウィッシュリストを作ってみてくださいね。



COMMONS PAGEメンバー限定
杉山 愛さんの トークセッションを開催!

今回のテーマは、

「To DoよりWant To DO」
〜『やりたい』を描く力〜

講演日時:2018年2月7日(水) 18:30開演 21:00終了予定
場所:霞が関ビルディング 31 Builedge霞が関プラザホール
人数:COMMONS PAGEメンバー限定80名様をご招待

定員に達したため、受付は終了しました。



杉山 愛
スポーツコメンテーター
1975年、神奈川県横浜市生まれ。
4歳でテニスを始め、15歳で日本人初の世界ジュニアランキング1位を獲得。1992年、17歳でプロに転向。世界4大大会でも活躍し、シングルスでは2000年の全豪、04年のウィンブルドンでベスト8入り。ダブルスでは2000年の全米、03年の全仏とウィンブルドンで優勝を果たした。世界4大大会のシングルスでは連続出場62回という女子の世界記録を樹立。2009年10月、東レパンパシフィックオープンを最後に現役を引退。
現在はテニスの解説をはじめ、情報番組のコメンテーターとして出演するなど、メディアを中心に活躍。

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