2016.10.05

『フォーブス ジャパン』発行人兼編集長代理、藤原昭広さんがお勧めするビジネス書

世界のビジネスリーダーが愛読し、自身も取材されたいと切望するビジネス誌『フォーブス』。その日本版の発行人であり、ジャーナリスト、コメンテーターとしてビジネス最前線を歩いている藤原昭広さん。『COMMONS PAGE』本誌では51対49の法則、元気カマスなどユニークな表現で企業が成功する秘訣、働き方の心構え、リーダーの在り方などについて語って下さった。WEB版では藤原さんがお勧めするビジネス書、最近出会った気になる経営者などについて紹介します。


月刊誌『フォーブス』は 1917 年にアメリカで創刊され、現在は世界 36 の国際版をもつ世界有数のビジネス誌。毎年発表する「世界長者番付」や「世界で最も影響力のある人物」などでも知られている。日本版は 2014 年に創刊。日本一美しい経済誌をテーマに、毎号独自の編集方針で世界と日本のビジネス最前線に切り込む誌面に財界人から起業家まで、ファンも多い。その『フォーブス ジャパン』の発行人兼編集長代理である藤原昭広さんにお勧めのビジネス書を2冊ご紹介頂きました。




❶ 未熟でいるうちは成長できる。
成熟したとたん、腐敗が始まる。

『成功はゴミ箱の中に』
(レイ・クロック ロバート・アンダーソン共著 プレジデント社)


 マクドナルドの創業者であり、「歴史の中で最も多くの億万長者を生み出した」と言われる実業家、レイ・クロック(1902〜84年)の自伝。クロック氏は高校中退後、ペーパーカップのセールスマン、ピアノマン、数種類のミルクセーキを同時に作れるマルチミキサーのセールスマンとして働き、営業マンとしての経験を積んで行く。52歳のとき、最初のマクドナルドを開いたマクドナルド兄弟と出会い、その効率化されたシステムに感動すると交渉の末、フランチャイズ権を獲得。以後、次々と事業を拡大しマクドナルドを世界で最も有名な飲食店のひとつに育て上げた。さらにメジャーリーグのサンディエゴ・パドレス獲得など精力的に活動を行なう。本書には52歳でマクドナルド創業者としての道を歩み始めたクロック氏の独特の発想と凄まじい行動力が綴られている。
「マクドナルドのシステム自体に対するリピーターをつくりたかった。」
「未熟でいるうちは成長できる。成熟したとたん、腐敗が始まる。」
などなど、数々の金言が綴られているが、特に印象的なのが
「競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている。」という一文。
 実際、クロック氏は深夜にライバル店のゴミ箱を漁って、仕入れと売り上げを調べたことが何度もあると告白している。さすがに今日、人のゴミ箱を調べることはできないが、競争相手を徹底的に調べろ!という教訓は活かされるべき。何より52歳で天職を見つけ、アメリカンドリームを実現させたクロック氏の行動力は今でも多くのビジネスパーソンに勇気を与えてくれるはず。
ちなみに、クロック氏は10代の頃、従軍経験があり同じ部隊にはウォルト・ディズニーがいた。


❷ 実績は実存であり、
実績のみが実存である。

『プロフェッショナルマネジャー』
(ハロルド・ジェニーン アルヴィン・モスコー共著 プレジデント社)


 アメリカの国際電話電信企業、ITT(International Telephone and Telegraph 現在は解体)の最高経営責任者だったハロルド・ジェニーン氏(1910〜97年)の自伝。1959 年にITTの社長に就任したジェニーン氏は14年半連続増益というアメリカ企業史上空前の記録を打ち立てました。さらに積極的に企業の買収・合併を行い、世界80ヶ国に350社におよぶコングロマリットをつくり上げ「経営の鬼神」とも呼ばれている。
 ジェニーン氏が経営論を語った本書は、各章の冒頭に最も重要なポイントが端的な文章で明示されている。例えば、第二章『経営の秘訣』はこう始まる。
「本を読む時は、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをする。」
 そして本文では次のように述べている。
 「終わりから始めることのすばらしい点は、それぞれのゴールが、そのゴールに行きつくためにしなくてはならないことを明示してくれ、そしてそれぞれのゴールはそれ自体がボトムラインとなる。」
 同氏はITTで、どんな状況でも収益を年に10~15%増やすことを目標にして公言し、そして実現させた。トップが現実的な目的を定めれば、そのゴールに行き着くためにすべきことがはっきりし、従業員がそれを共有できる。
 そして最後に次の一文を寄せている。
「実績は実存であり、実績のみが実存である。
実績のみが、きみ自身として成長する自由をきみに与えてくれる。」


テクノロジーの進化を理解しなければ
正しい判断は下せない。


 藤原さんが発行人兼編集長代理として手腕を発揮している『フォーブス ジャパン』の最新号(9月24日発売)では日本の経営者を大々的に取り上げている。「凄い経営者100選」とタイトルが付けられた特集企画では、日本企業の経営者たちが100位まで成績表と共にランキングされていて、1位は第一生命保険の渡邉光一郎社長だった。特集においては藤原さん自身も数人の経営者に取材されたというが、特に印象的だった人物の名前をお伺いすると、シスメックスの社長である、家次恒氏の名前を挙げた。
 シスメックスは神戸に本社を置く医療機器メーカー。主要事業のヘマトロジー(血球計数検査)では世界トップシェアを誇っていて、家次氏がトップに就任以来、15期連続増益(営業利益)という快進撃を続けている。家次氏に取材した印象を藤原さんは次のように語ってくれた。
「企業は成長しなければダメだという信念を持っている経営者です。シスメックスは素晴らしい医療機器の技術を持っていますが、その技術はあくまで手段であって、目的ではないことを認知されている。目的は顧客の価値を最大化すること。そのためには機器を販売するだけでなく、試薬の品質、検査プロセスにかかわるすべての過程において、満足してもらえるようなサービスを提供する体制を整えた。だからこそ世界的優良企業になり得たのです。目的という終わりから始める。まさにジェニーン氏の哲学を実践しているのではないでしょうか。」
 家次氏の他にも多くの経営者に取材した藤原さんが、強く感じたのは今の経営者はテクノロジーの進化についていけないと正しい経営判断を下せないということ。
「リーダー、マネジャーこそIoTについて学ばなければ、正しい判断ができない時代です。ソフトバンクがイギリスの半導体設計会社アームを買収しましたけど、アーム社が設計するチップの価値を誰よりも理解していたのが孫正義さんなのではないでしょうか。」
 多くの経営者と語り、理想的な組織について考え続けている藤原さんが、大好きなマンガが井上雄彦氏の『スラムダンク』(集英社)だという。
「バラバラで仲良しとは言えないメンバーが勝利という目的に向かって団結し、試合を重ねるごとに信頼関係が生まれてくる。まさに理想的な組織の在り方なのではないでしょうか。元気がなくなったときに何度も読み返し、パワーをもらっています。」
 活字が大好きで、活字を通して日本を元気にしたいと願う藤原さん。その目的に向かって、日々ビジネスパーソンへの取材を続けている。




藤原昭広
1958年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、(株)プレジデント社入社。99年、『プレジデント』編集長に就任、月2回刊化リニューアルを成功させた。2003年常務取締役就任、編集統括。編集長業務のかたわら、NHK「クローズアップ現代」、TBS「ブロードキャスター」等のコメンテーターを務め、講演も多数行う。2013年6月、㈱アトミックスメディア『フォーブス ジャパン』編集顧問に就任。2015年4月より同社取締役、『フォーブス ジャパン』発行人兼編集長代理に就任。

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